「辺境の路地へ」上原善広の感想

上原善広さんは、被差別部落出身のルポライターで、これまで何冊か読んできました。
これまで読んだ作品は、各国の被差別地域の事情や、地域独特の食べ物を紹介したものであったり、ルポルタージュの形に沿ったものが多かったのですが、この「辺境の路地へ」は、上原さんが旅をしながら出会った人との交流や、思ったことや感じたことなどが軸になっているので、エッセイ色の強いもので、上原さんのその時の内面が見られて興味深かったです。
こういった、人がなかなか見ない世界を、調べて発信する仕事は、きっと消耗も大きいだろうなと考えていたので、この本の中で、現状から逃げたい心情の上原さんの姿をかいまみられ、一読者の私も、お疲れですねと声を掛けたい気持ちになりました。

死後の世界とつながるイタコや、売春島の話など、辺境と呼ばれる異世界に近い世界が、今の日本にあり、その場所によって癒されることもあるのだということをこの本で知ることができます。
若くして亡くなった家族のために、架空の結婚相手を絵に描いてもらう死後婚の話はまったく初めて聞いたので、家族間の思いの深さに驚きも感じながら読みました。
昭和40年代くらいまでは、子どもが生まれても無事に育つことができない場合も多かったので、こういった風習も生まれたのだと思います。
今は多くの子どもが助かる時代なので、だんだんすたれていくと思いますが、死後婚を始めた方の気持ちに思いを馳せます。