亡くなった人と会えるんです

辻村深月さんの書いた「ツナグ」という小説はとてもいい本だと思います。なんといっても亡くなった人ともう一度会えるのですから。まあ、現実にはこんなことがあるわけではないと頭ではわかっているのです。でも、やっぱり亡くなったあの人に会いたいな、お話したいなと思っている人は多いと思います。

わたしもその一人でした。ですから、こういう話を読んでいるうちに、亡くなった人と会えるって信じてもいいのではないかと思えました。信じることは自由ですから。

この小説の中では、ある生きている人が亡くなった人と会いたいと、“使者(ツナグ)”に依頼します。そして使者は亡くなった人に打診をして、会ってもいいという了解を得たときにだけ、使者はふたりを引き合わせることができるのです。亡くなった人と会える権利を行使できるのは一生に一度だけです。だから、みんな慎重に依頼をするし、依頼を受けていくのです。誰しも会いたいと思う人はたくさんいるのではないかと思います。

「ツナグ」は、5つのお話で構成されています。その中でも考えさせられるのは、会社員の女の人が亡くなったアイドルに会うお話です。たった一度のチャンスを、家族や友人ではなくアイドルに使ってしまうなんて考えられないではないですか。でもこのストーリーを読み進めるうちに、この会社員の心情もわかりました。“死んでもいいや“とすさんでいく心を救ってくれたのは、このアイドルだったのだと。

いろいろな人生があります。だから、自分のものさしだけで考えていたら人に優しくできないな、と痛感した本でした。