夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

1作目「老歌手」でのラストシーンで一気にこの短編集が好きになりました。大物シンガーとして栄華を極めた初老の男性とトロフィーワイフの愛情関係に差し込む黄昏は微笑みながら泣きたくなるような複雑な感情に陥りました。 特に印象に残っているのが「モールバンヒルズ」です。簡単でない音楽の道を目指す若い主人公の目線で読み進めていくと、ふと驚く程に悲しい視点で外国人夫婦の関係の歪が垣間見えます。 今目の前にある問題が問題となっているのではなく、その問題を通して夫婦間に確実に存在している大きな心の問題が露呈されるという部分... Read More

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神去なあなあ日常

染谷将太主演で映画化もされた、三浦しをん原作の小説。 横浜に住む主人公の平野勇気が、ひょんなことから大自然が広がる三重県の神去村に行き、林業に携わる中での日常の出来事を日記形式で書いたもので、これが面白い。 思わずクスッと笑ってしまう書き方なので、どんどん読んでしまいます。 三浦しをんの小説が好きでいろいろ読んでいますが、この小説は特にお勧めです。 「光」のような心の闇みたいなものが書かれたものではなく、勇気の純粋な気持ちがいきいきと書かれていて、読み手が思わずにこっとしてしまう小説です。 恋心を抱く直紀... Read More

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「辺境の路地へ」上原善広の感想

上原善広さんは、被差別部落出身のルポライターで、これまで何冊か読んできました。 これまで読んだ作品は、各国の被差別地域の事情や、地域独特の食べ物を紹介したものであったり、ルポルタージュの形に沿ったものが多かったのですが、この「辺境の路地へ」は、上原さんが旅をしながら出会った人との交流や、思ったことや感じたことなどが軸になっているので、エッセイ色の強いもので、上原さんのその時の内面が見られて興味深かったです。 こういった、人がなかなか見ない世界を、調べて発信する仕事は、きっと消耗も大きいだろうなと考えていた... Read More

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冷静と情熱のあいだ/江国香織

1999年に出版された江国香織さんの恋愛小説です。 アオイという日本人の、イタリアでの生活を描いていて、主人公のアオイ目線で、イタリアの町の風景、友人、恋人などがとても繊細に描写されています。 まず最初の印象としては、とにかくお洒落という事です。 舞台がイタリアということもありますが、作中で描写される登場人物の一つひとつの言動、登場する場所、食べ物、風景、がとてもかっこよく、イタリアという見知らぬ地に、つい思いをはせてしまいました。 もうひとつ印象的だったのは、やはり江国氏の独特な世界観とストーリー展開で... Read More

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空中ブランコ

とても温まる展開でした。 一見、人の話を聞かない、自由奔放にしか見えない精神科医が、患者自身が問題に気付くように導く姿が、意図的なものなのか、本当に何も気付かずにやっている事が、結果的に良い事に繋がったのか、とても面白いと思いました。 人は、何か問題が起きたり、壁にぶつかった時に、自分を省みる、という事はなかなかできません。 何かの要因を探したり、誰かのせいにしたり、自分が原因ではない、自分は悪くない、という風に考えてしまったりします。 そのため、周りの言葉が受け入れられなかったり、大切な人が勇気を出して... Read More

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小倉昌男 経営学

ヤマト運輸の元社長が執筆したヤマト運輸のビジネスモデルを作り、実践して現在の形にまで成長させた経緯や、ビジネスに対する考え方を具体的に書いた内容の濃い本です。 小倉昌男氏がアメリカでUSPが民間会社として成り立っていることを目の当たりにして、それを日本で取り入れようとした時に、当時の郵政省の反発、また例え実質上は赤字になってしまう、日本全国の配達網を局所的に捉えて短期的な利益を追求することではなく、長期的な視野から全国にネットワークを張り巡らせて、どこでもサービスを供給できる事によって、長期的な利益を優先... Read More

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「自負と偏見」について

 「高慢と偏見」のタイトルで日本では知られていますが、こちらは中野好夫さんの訳による「自負と偏見」です。ミスター ダーシーとエリザベスの序盤から中ほど過ぎまで占めるすれ違いやダーシーの自分より格下、と見ている人たちへの態度のツンぶりと、エリザベスにぞっこんになってからのデレの落差にキュンキュンして、何度も読み返しました。ミスター コリンズの登場シーンは飛ばしてしまうことが多かったですが。  そのコリンズをはじめとして、登場人物のキャラが強いです。エリザベスの母親は韓ドラに良く出てくるハチャメチャなお母さん... Read More

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断捨離ですっきりしたけど、古本は高価買取店で売ればよかったかも

3年前に引っ越しをしたので、それを機に人生で初めての私の中では本格的な断捨離をしました。 今までは本でもカバンでも雑貨でも靴でも、家庭用品でも、とにかく何でも目に付いて欲しいと思うと後先を考えずに購入をしていました。 しかし買ったものは本当に必要だと感じているものはごく一部の物ですし、ほとんどが雑に使ったり、本に関しては心に残るような本が何冊あるかなと?といった感じです。 友人で本当に良いものだけを大切に使ってる人がいるのですが、お宅へお邪魔した時に暮らしがシンプルな事にも驚きましたが、凄く良いなと感じて... Read More

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読みながら旅した気分になれる『ちょっとそこまで旅してみよう』 益田ミリ著

どこか旅行に行きたいと思いつつ、いざ行こうと思うとどこに行きたいのかわからなくて色々探しているだけで疲れてしまい結局行かずじまいなんてことがよくあります。ちょうどそんな時ふらりと寄った本屋さんでこの本を見つけました。 日本各地の旅行ガイドブックのようなものではなく、著者が訪れたところで感じことや経験したこと、目にしたものが日記のように書かれています。またページの終わりには、かかった交通費や宿泊費、食費、施設のチケット代などその旅にいくらほどかかったのかが表で記されており「なるほど、この辺りまで行くとこのく... Read More

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亡くなった人と会えるんです

辻村深月さんの書いた「ツナグ」という小説はとてもいい本だと思います。なんといっても亡くなった人ともう一度会えるのですから。まあ、現実にはこんなことがあるわけではないと頭ではわかっているのです。でも、やっぱり亡くなったあの人に会いたいな、お話したいなと思っている人は多いと思います。 わたしもその一人でした。ですから、こういう話を読んでいるうちに、亡くなった人と会えるって信じてもいいのではないかと思えました。信じることは自由ですから。 この小説の中では、ある生きている人が亡くなった人と会いたいと、“使者(ツナ... Read More

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